やや煽り気味のタイトルで失礼しました、Repro Booster のプロダクトマネージャーの Edward Fox です。暑いですね。
Repro Booster開発チームでは、昨今の盛り上がりに漏れることなく、生成AIやコーディングエージェントを積極的に開発に取り入れています。その活用範囲は開発業務に留まらず、ドキュメンテーションやお客様からのお問い合わせ対応といった周辺領域にも及んでおり、プロダクト開発の効率を大きく向上させていると実感しています。しばらく取り組みを続けてきて、ある程度体系化できてきたと感じられるフェーズに入ってきたので、Boosterチームにて実践している具体的な手法を紹介できればと思います。
ユースケース1. 開発全般
現在の開発チームで最も活用されているのが、自律型AIソフトウェアエージェントであるDevinです。DevinはSlackに常駐しており、チャット経由や専用のWeb UIから調査やバグ修正といったタスクを指示しています。Devinは自らコードを解析し、修正案をPull Requestとして上げてくれます。さらに、そのPR上で人間がレビューコメントをつければ、フィードバックを反映した修正も自動で行ってくれます。
主な用途は開発業務、特に比較的小さなバグ修正や、新機能の明確に切り出せる特定部分の実装です。今年初めにDevinを導入した当初は、正直なところ「ジュニアエンジニア」といった印象で、アウトプットの質も高くなく、自分で書いた方が早いと感じる場面も少なくありませんでした。特にレビューの往復が続くと、直前の指示のみで突っ走ってしまい、少し前に言ったことを忘れて明後日の方向に行ってしまうこともしばしばありました。しかしながら、最近では後述するKnowledge機能が活用できているからか、あるいはモデル自体の性能向上も手伝ってか、かなり成果物の筋は良くなってきている印象です。

Devinについて以前書いた記事もあるので、是非こちらも読んでみてください。
DevinのKnowledge機能
Devinには「Knowledge」という機能があります。これは、Devinとのやり取りや指示の中で、将来にわたって記憶させておきたい事柄を知識として定着させ、その後のアウトプットに活用させる機能です。これにより、毎回詳細なプロンプトを記述する必要がなくなり、Devin自身に知識が蓄積されることで出力の質が向上していくため、非常に効率的です。
非常に便利なことに、Devinはユーザーとの対話の中から「この内容をKnowledgeとして追加しますか?」と自ら提案してくれます。ユーザーはそれを承認したり、少し内容を修正したりするだけで知識を蓄積できるため、手間なくエージェントを育てていくことが可能です。痒いところに手が届くUXという感じで、使っていてとても快適ですし、Devinのアウトプット改善に貢献しているのがよく分かります。

ユースケース2. Agentic Coding
チーム全体で活用するDevinとは別に、各エンジニアは個人のコーディングを支援するツールも利用しています。具体的には、Cursor、Claude Code、GitHub Copilotといったツールが挙げられ、各自が最も自分に合ったものを選択して使っています。
特にClaude Codeは、新しいプロジェクトを立ち上げたり、新規リポジトリでコンポーネントを実装したりする際に、非常に迅速に土台となるコードを生成できるため、今後さらに活用シーンが増えていくと考えています。
ユースケース3. コードレビュー
最近では、Devinが作成したプルリクエストを、Google Geminiにレビューさせるという、AI同士でコードレビューを行う試みも始めています。それぞれのAIモデルに得意・不得意があるからか、異なるモデルを組み合わせることでレビューの質が向上している印象です。Geminiは1度に扱えるコンテキストウィンドウが大きいからか、そこそこ複雑なリポジトリやPRであっても、かなり筋の良いレビューコメントをつけてくれるので、非常に助かっています。現状は、人間が最終的なレビューを行いマージするフローにはなっていますが、将来的にはこのプロセスもAIに移譲されていくかもしれません。もちろん、人間が書いたコードをGeminiにレビューさせることもやっており、非常に有用だと感じています。

ユースケース4. ドキュメント
ドキュメントの作成やメンテナンスにおいても、ChatGPTだったり、ここでもやはりDevinの活用が進んでいます。例えば、あるバグを修正させた後、その挙動に関連するドキュメントを探し出し、内容を更新させるといった一連の作業を任せています。また、リリースノートの執筆もDevinの担当業務の一つです。

プロダクトマネージャーである私がPRD(Product Requirements Document)を書く際にもAIを利用しています。私自身、プロダクトのアイデアは口頭で話しながら思考を深めたり整理することが多く、またRepro Boosterに関するドメイン知識やコンテキストも脳内に蓄積があるため、テキストに書き起こすよりも話した方が早い場合が多々あります。そこで、音声入力を使って文字起こしし、AIに清書・整理させてドキュメント化するというプロセスを日常的に行っています。
PRDは、エンジニアが開発する際の検討の基点となるだけでなく、AIにコーディングを依頼する際にも「PRDに書かれた要求仕様を満たしているか」という観点からアウトプットをチェックするための重要なインプットとなります。
PRDに加えて、各プロジェクト担当のエンジニアにはADR(Architecture Decision Record)という形で、アーキテクチャや技術選定に関する意思決定をドキュメントとして残してもらっています。こうしたドキュメントが揃っていることで、実装が設計に沿っているか、あるいは現行の仕様と衝突しないかといった点を、人間だけでなくAIにもレビューさせることができ、開発の効率・安定性向上に繋がっています。

ユースケース5. カスタマーサポート
運用やカスタマーサポートの領域でもDevinの活用が始まっています。Devinは、与えられたタスクを処理するセッション内でブラウザを起動し、Webページにアクセスして情報を収集できることが特徴の1つです。
我々はこの機能を活用し、プロジェクト管理ツールであるClickUpに作成されるクライアントからのお問い合わせチケットの一次調査をDevinに任せています。サポートチケットには担当者から所定のフォーマットに則って問い合わせ内容や困っている点を記述してもらうことで、Devinがソースコードを参照しながら調査を行い、結論をClickUpのコメントとして投稿するところまでを行ってくれます。
非常にややこしいエッジケースも多いため、完全にDevinだけで自走して解決できる割合はまだ高くありません。しかし、単純なケースであれば5分程度でチケットがクローズできる例も出てきており、この領域におけるAIの貢献には今後も大いに期待しています。

ブラウザを開き調査タスクにあたっている様子

調査結果や修正の進捗をコメントしてくれる
ユースケース6. レポーティング
これ以外にも、開発チームのSlackチャンネルにおける1週間分のやり取りを要約させ、開発の進捗やリリース状況が一目でわかるレポートを自動投稿させたり、お客様の導入状況が共有されるチャンネルをサマライズさせて全体の進捗を把握したりと、活用は多岐にわたります。

まとめ)AI in the Loop
バグ修正やサポート対応を通じて得られた知見をDevinのKnowledgeとして蓄積させたり、その内容を基に社内向けのFAQや仕様ドキュメントを作成させたりもしています。これにより、単一のチケットを処理するだけでなく、得られた知識を組織全体で再利用可能な汎用的な資産へと組織化させるループが生まれつつあります。
このようなループを通じて、AIが活躍する場面は我々の業務フローの中に着実に増えており、DevinをはじめとするAIは、Repro Boosterのプロダクト開発にとって既になくてはならない存在になっていると感じます。
AI活用方法の一つ一つに目新しさはないかもしれませんが、地に足ついた形で特性の違う各種AIを使い、業務を効率化している様子や雰囲気が伝われば幸いです。

うちのデビンくん
WE ARE HIRING!
さてさて、そんな形でAIの助けを借りながら開発しているRepro Boosterですが、積極的に開発者の採用活動を進めています。Webパフォーマンスに関心がある、あるいは「タグを入れる」だけでWebパフォーマンスを改善するRepro Boosterの技術に興味を持っていただけた方は、ぜひ気軽にご連絡ください。
