
こんにちは、Repro Booster のプロダクトマネージャーの Edward Fox です。5月15日に開催された Repro Tech Meetup #10: パフォーマンスを改善する技術のイベントレポートをお届けします。
前置き: イベントの形式について
これまでの Repro Tech Meetup では、発表者を事前に募り、4-5本ほどのLTを行い、その後懇親会に移行するスタイルで開催してきました。技術系の勉強会では非常に一般的なスタイルで、開催する側としても参加する側としても馴染み深い形式かと思います。ただ個人的に感じていた課題として、せっかく非常に面白いトピックに出会えても5-10分程度でセッションが打ち切られてしまうと、深堀りができずに終わってしまい、もっと聞きたかった!という気持ちを抱えたまま帰路につくことが(稀によく)ありました。懇親会で直接話して根掘り葉掘り聞かせてもらうこともありますが、そうではなくイベント自体のコンテンツとしてひたすら掘り下げる形式があっても良いのではないか、と。そんな中で、私が直近で参加したイベントいくつかがパネルディスカッションの形式で行われており(技術系の勉強会ではなくPdMの方面です)、参加者として非常に満足度が高く、似たような形式で開催してみようと思うに至りました。
パフォーマンスをテーマに話そうと企画を考えていた折に、過去の Repro Tech Meetup で発表していただいたこともある brnさん に声をかけてみたところ快諾いただき、晴れてイベントが開催できる運びとなりました。brnさんと事前の打ち合わせで軽く話した際には、パフォーマンスを軸にしつつトークテーマが縦横無尽に広がり、良いイベントになる自信も持てました。
パネルディスカッションのサマリー
参加人数こそ多くは集まりませんでしたが、その分パネルディスカッションという枠に閉じずインタラクティブな対話も時折見られる場となり、濃密な話が色々とできたと思います。
特に発表資料などは用意していなかったため、Geminiによるパネルディスカッションのまとめを載せておきます。Webパフォーマンスから派生し、様々なトピックにまたがって2時間ほど熱く語った様子が見て取れるかと思います。
- パフォーマンス改善の課題: Repro Boosterの開発での課題。技術的ボトルネックに加え、組織的課題(影響範囲確認、承認、マーケティング連携)が重要。SaaS導入によるパフォーマンス低下も懸念。
- マーケティングとパフォーマンスの対立: マーケティング指標とウェブサイトパフォーマンスの意識ずれ。コアウェブバイタルでUXも重視されるように。SEO部門もパフォーマンスを意識していない現状。広告インプレッション優先による他スクリプト遅延も。
- 広告技術とパフォーマンス: タグマネージャーでウェブサイトが重くなる現状。ユーザー体感と広告側のパフォーマンス要求のずれ。広告技術関連会社はフロントエンドエンジニア不足でパフォーマンス意識低い傾向。
- 広告収益モデルとパフォーマンスへの影響: ウェブは広告依存。広告技術は個人特定ノウハウ蓄積。Cookie廃止が強引な広告手法を生む可能性。パフォーマンス意識が売上に繋がらず軽視される傾向。
- モバイルにおけるパフォーマンスの重要性: モバイルではデスクトップ以上に重要。操作性や画面特性から、ローディング遅延はユーザー体験に悪影響。遅いサイトは離脱率高。快適なUIとパフォーマンスが重要。
- ウェブアクセシビリティとパフォーマンス: アクセシビリティからも重要。障害者差別解消法で低速回線でも閲覧可能な配慮。多様なネットワーク環境で全ての人に快適な体験を。高画質コンテンツや広告で低速回線では重くなる現状。
- 広告とパフォーマンスの今後のあり方: 広告表示のJavaScriptがユーザー体験を損ねる場合。広告以外の収益モデルの可能性。広告業界全体の改善必要。コアウェブバイタルのSEO影響は限定的で課題。より直接的な指標が必要。
- パフォーマンス改善の指標と現状: PageSpeed Insights(Lighthouse)が指標。ただし実環境と異なるWi-Fi環境での評価、指標アップデート頻度の低さが課題。スロー3Gプリセットがグローバル基準で日本に合わない可能性。
- パフォーマンスの現状: かつてあった国ごとの差は縮小。V8 Javascriptエンジンの改善、CIでのパフォーマンス低下検出。ベースラインはゴールデンテストで決定。
- パフォーマンス改善の難しさ: パーサーへの小さな変更も影響。全世界のCPUサイクル考慮必要。JITエンジンは複数回実行後の最適化のため通常テストで効果が出にくい。過去にJITコンパイラバグでUI停止事例。
- 技術的な課題と将来の展望: Javascriptエンジンの複雑さから最適化に限界。AI活用に期待。JIT逆最適化やブラウザエンジンごとの最適化段階の違いも課題。JIT高速化が体感パフォーマンスに繋がらない可能性も。
- 型付き Javascript とパフォーマンス: Typescript導入で型意識が普及し、引数変更による低下を防ぐ可能性も限定的。ブラウザエンジンの賢さから出し抜く最適化は困難。
- メモリ管理と SPA の影響: DOMオブジェクトのJavascript侵入によるメモリ管理課題。SPAでのメモリリークリスク増加。Reactなどでの参照管理の難しさ、スコープとライフタイムのずれによる問題。
- 過去のパフォーマンス対策: IE6時代はパフォーマンス重視。DOM操作慎重。jQueryなしで独自セレクター開発。現在はブラウザ性能向上で重要視されず。
- パフォーマンスバジェットの概念: 許容範囲内でパフォーマンス維持しつつマーケティング活動。ユーザー体験と企業利益のバランス。コアウェブバイタル参考に目標設定。
- パフォーマンスの経済的価値: パフォーマンスを経済価値に変換する必要性とその難しさ。ウェブサイト高速化が社会全体の経済活動を促進する可能性も実証困難。消費電力可視化の重要性。
- マーケティングにおける速度の価値: 高速サイトは差別化要因になりにくいが、低速サイトは離脱を招く。ユーザー調査で遅い経験は多いが速い経験は少ない。遅いことへの対策が重要。
- Web の将来と AI の影響: 将来的にWebサイトの必要性が低下しAIが代替の可能性。娯楽や買い物など能動的関与コンテンツは残る。データに価値があればUIなしでもAIでサービス存続。最終的にはAI生成情報も人間が理解しやすい形での提示が必要。
- AI エージェントの可能性: GoogleなどのAIエージェント動向。将来的にはAI経由での情報アクセス。スタートアップはAI専用データで差別化のチャンス。
イベントレポート
Xの #reprotech を追ってもらえると、なんとなく雰囲気は分かるかと思います。いくつか印象的な投稿を引用します。
パフォーマンスとアクセシビリティ : 「通信速度が十分でない状況でも閲覧できること」という要素がアクセシビリティ文脈で自治体などでも意識され始めている / 普段自分が体験している通信速度が当たり前ではないのは本当たしかに#reprotech
— rocky=興梠:CTO@LAPRAS inc. (@rocky_manobi) May 15, 2025
パフォーマンスバジェットはエラーバジェットの一部として運用できそうね。”x秒を超える”という条件をエラーの条件に入れる的なね。 #reprotech
— でこくん (@dekokun) May 15, 2025
また懇親会ではRepro Boosterについての質問も挙がり、あまり外には出せない内部的な情報にも触れながらBoosterの解説をする場面なども見られ、盛況のうちにイベントは終わりました。パネルディスカッションの形式に限らず、今後も色々な形でWebやパフォーマンスに関するイベントを企画していければと思っています。
WE ARE HIRING!
最後に、Repro Boosterでは開発者を採用しています。Webパフォーマンスに関心がある、あるいは「タグを入れる」だけでWebパフォーマンスを改善するRepro Boosterの技術に興味を持っていただけた方は、ぜひ気軽にご連絡ください。
