対話型生成 AI を "もう1人のメンター" とするオンボーディング 後編:ツールと注意点

こんにちは。Platform Team / Sys-infra Unit の青山(@MintoAoyama)です。

前編では、オンボーディングにおける「聞くコスト」の問題と、対話型生成 AI を「もう1人のメンター」として活用するという考え方を紹介しました。後編では、実際にどのツールを活用しているか、そして注意すべきことなどについて紹介します。

活用できるツール

Repro では、用途に応じていくつかの対話型生成 AI 、いわゆる RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)ツールが導入・整備されています。それぞれ得意とする情報の種類が違うので、目的に合わせて使い分けるのがポイントになります。

Slack AI : 社内の「フロー情報」を探す

Slack AI は、日々の会話の流れの中に蓄積された情報を探すのに適しています。

  • 過去の議論やアナウンスを検索する
    • 「〇〇の仕様変更はいつ、どのチャンネルで話し合われたか」など
  • 特定の期間に起きた出来事を時系列で整理する
  • 自分や特定のメンバーのアクティビティをまとめる
    • アラート通知を流すチャンネルなど、その日・その週などで起こった出来事を要約するなど

ドキュメントには残っていないけれど Slack のどこかでやり取りされていた、という情報を拾い上げるのに向いています。従来のキーワードによる投稿の検索では検索演算子などを把握する必要もありましたが、それを抜きに気軽に調べられるのも良いところですね。

esa + Claw'd くん : 社内の「ストック情報」を探す

情報共有ツールである esa には、整理された社内ドキュメントや作業メモが保存されています。もともと、用語の定義・システムの設計経緯・チームのルールなど、腰を据えて書かれた情報にたどり着きやすい仕組みです。

そして Claw'd くん は弊チームの今が構築した、esa を含む複数の社内ツールと連携できる Slack Bot です。詳しくは以下の記事をご覧ください。

slack-mcp-client を使って Slack に AI Bot を導入しよう - Repro Tech Blog

esa の MCP Server と組み合わせることで、Slack 上から自然言語で社内ドキュメントを検索できます。「〇〇という機能はどういう経緯で作られたか」「△△という用語の定義はどこかに書いてあるか」など、esa の検索画面を開かずに自然言語で質問を投げられる上、記事中にもあるように GitHub / ClickUp(タスク・プロジェクト管理ツール)/ AWS Knowledge など様々な MCP Server と連携できるのも良い点です。

Google Gemini : 一般知識と Google Workspace 内の情報を探す

Google Gemini は、(その業界における)一般常識的・汎用的な知識や Google Workspace と連携した情報の確認に使っています。

Gmailでのメールの要約に始まり、Google Calendar では「今週の自分のミーティングをまとめて」など、対象日や期間の予定を確認・要約できます。 Google Drive のフォルダを開くと「フォルダのハイライト」を表示してくれる機能があり、「もっと見る」からチャット形式でより詳細な分析を行えます。

もちろん、社内ツールには載っていない業界標準の用語・概念・ベストプラクティスを確認したいときにも重宝します。画像をはじめとしたマルチモーダルにも対応しています。Gem と呼ばれる特定の役割や指示を事前に登録し専用のAIアシスタントとしてカスタマイズできる機能もあり、社内で共有できたりもします。

また、何より重宝するのが Google Meet での自動メモ作成機能 "Geminiメモ" ! 会議終了後、文字起こしに加え、会議の要約・次に行うべきタスクを抽出してくれるほか、それらの情報をベースに質問できます。ミーティングの最中でも話者を遮ることなく質問できるのもメリットです。

GitHub Copilot : コードベースを調べる

GitHub Copilot は、コード・システムの詳細に関する問い合わせに使っています。リポジトリ・フォルダ・ファイルを指定して質問できるのが特徴で、たとえば以下のように質問します。全体像をざっくり把握したいときや、どこから読み始めるかの手がかりを得たいときに使えます。

  • 「このリポジトリの概要を教えてください」
  • 「このファイルは何をしていますか」
  • 「この関数が呼ばれている箇所はどこでしょうか」
  • 「この Pull Request について、背景と〇〇との関連性について教えてください」

Copilot は Visual Studio Code をはじめとしたIDEからも利用できますが、Webブラウザ版 が用意されているところも素晴らしいところです。ソースコードを手元に clone する必要がなく気軽に始められるほか、GitHub 上に Copilot のアイコンのボタンがあるなど様々な導線が用意されていたりします。利用の際に様々なモデルを選択できることも魅力です。

なお、Webブラウザ版は1度に読み込めるファイル数に制限があります。そのため、リポジトリの構成や質問内容によっては、回答がダイジェスト的になる場合がある点に注意が必要です。(ほとんどの場合、Copilot 自身はそれらの事情や制約について都度に回答で説明してくれるため、大きく信頼性が損なわれることはないとは思われますが)

ソースコード全体を詳細に分析したい場合は、clone することを前提に Claude Code や Gemini CLI や Codex CLI などのAIエージェントをご検討ください。

注意すべきこと

組織として許可されたツールを使う

大前提として(言うまでもないことだとは思いますが…)、業務利用が承認されているツールのみを使うようにしてください。社内の情報が外部サービスへ流れることになるため、ツールの選定には組織としての判断が必要になります。

裏を返すと、組織として許可の範囲を広げていくことが、チーム全体の生産性向上にそのままつながります。リーダーやメンバーが積極的に導入を進めていく意義はここにあると思っています 💪

回答を鵜呑みにしない

生成 AI はハルシネーション(もっともらしい誤情報の生成)を起こすことがあります。参照しているドキュメントが古い場合もあります。

そのため、回答の根拠となるリソースが確認できるかを意識することが望ましいです。ドキュメントであればその URL、カレンダーの予定を根拠にした回答であれば予定の名前や開始時間など具体的な情報が示されているか。モデルの性能を鵜呑みにせず、参照元が示されていない回答は特に慎重に扱ってください。

判断が難しいことはメンターに確認する

生成 AI の回答で方向性が掴めたとしても、判断に迷う内容や重要な決定に関わることは、必ずメンターやチームメンバーに確認してください。前編にも書いたことですが生成 AI はあくまで「調査の補助」であり、最終的な判断を委ねるものではありません。

調べて分かったことは積極的に更新・共有する

調査の中で「このドキュメントの内容が古い」「この説明が不正確だ」と気づくことがあります。そのときは積極的に修正・ドキュメント自体のアーカイブを検討してください。よく、新人が社内ドキュメントを修正するなどの流れやルールがあると思いますが、ドキュメントの品質が上がれば生成 AI の回答精度も上がっていくはずで、修正作業自体のモチベーション向上にもつながりやすいでしょう。

さらに理想的なのは、調査で判明したことをメンターやチームに共有できる仕組みがあることです。Slack や esa でメモとして透明化しておくことで、メンター・メンバー側からも事実でないことや補足したいことをフォローする状況を作りやすくなります。質問・回答の全てを共有するとノイズになりかねないので、「参考になった」と感じた回答を中心に共有するとよいでしょう。

おわりに

対話型生成 AI を使ったオンボーディングの支援は、まだ「こうすれば正解」という方法が確立されているわけではありません。ツールの進化も速く、数ヶ月前・数日前と今では使い勝手が大きく変わっていることもあります。

ただ、「質問の前に自分でできる調査の質を上げる」という考え方は、ツールが変わっても使えると思っています。この記事が活用のきっかけになれば幸いです 🙇‍♂️

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